不用品回収 東京の構造

財政支援策や施設基準、医師・看護師の配置基準などを緩和した経過措置を設けるなど、さまざまな対策を講じることになった。 しかしながら、いくら転換しろと言われても、そもそもの枠が決まっているのでは転換できない。
これを受けて、平成二十一年度から始まる第四期の介護保険事業計画において、参酌標準を見直すことになった。 療養病床の再編自体は平成二十四年度までなので、それも意味のないことではないが、早くも平成十八年度から診療報酬改定により医療保険適用の療養病床の転換を促しておきながら、なぜそんなに先まで待たないといけないのか、これでは対応にまったく計画性がないではないかという批判が出てきたのも当然である。
さらに、平成二十年度になって、介護療養型医療施設の転換先として「介護療養型老人保健施設」という新たな施設形態を創設しているが、それで患者の必要とする医療が確保されるのか、依然として不安の声は根強い。 この章の冒頭で述べたように、医療療養病床の削減数は媛和されたが、介護療養病床については、平成二十三年度末をもって廃止すると法律に明記されており、方針転換には法改正が必要となる。
いまのところ、この方針は堅持されたままだ。 現場から轟離した政策判断療養病床の再編に対するさらなる批判として、現場の実態を無視しているというものがある。

療養病床の再編を通じての究極的な考え方というのは、患者をなるべく「住まい」へ戻そうというものである。 私はこの発想自体まちがっているわけではないと思うが、在宅医療の体制を整備していくためには相当の年月を必要とする。
いくらそれが理想的だからといって、一朝一夕に実現できるものではないのである。 厚生労働省は、しばしば医療機関における死亡割合の年次推移というデータをもとに、次のような説明をする。
医療機関において死亡する者の割合は、昭和二十五年には約一〇%であったが、年々増加しており、昭和五十一年に自宅で死亡する者の割合を上回り、さらに近年では八〇%を超える水準となっている、というのである。 つまり、戦後すぐの時点と比較すると、医療機関で死亡する者の割合と自宅で死亡する者の割合が逆転したということである。
もちろん、その背景に「病院信仰」の高まりがあるのは確かだが、たとえ患者を住まいに戻すとしても、現在のような家族環境や住環境で日常的に必要な対応がとれるのであろうか。 家族形態や地域コミュニティを破壊してきたのが戦後社会である。
いくつかの成功事例をもとにした美しい絵を描いてみたところで、それが本当に自分の身のまわりで実現できるのか、一般の国民としては不安を拭い去れない。 長野県の平均在院日数が最短であるといっても、それは長年にわたる地域的な体制づくりがあってこそ可能となったものであり、そうしたこれまでの努力の積み重ねを無視することはできない。
在宅医療の推進という方向は正しいが、それによって国民が不安ばかりを増すことのないよう、時間をかけながらていねいに進めていく必要がある。 現場との諦離ということでいえば、療養病床再編の根拠となった医療区分にも当てはまる。
医療区分は診療報酬改定のために中医協が行った調査に基づいているが、これはもちろん決して全数調査のようなものではなく、あくまでサンプル調査である。 しかも、区分するのは医療機関自身である。

医療区分を実際に導入してみたところ、導入以前とくらべて、医療の必要性の高い「医療区分3」や「医療区分2」が増えたと報告されている。 そもそも患者の状態というものは、決して静態的なものではない。
いつ何時状態が変化するかもしれないのが患者である。 ある時点では医療の必要性が低かったとしても、次の瞬間には医療の必要性が高まるかもしれない。
医療と介護の役割分担が必要な側面はもちろんあるけれども、一人の人間として見た場合に、両者はきれいさっぱりと分け切れるものではない。 どうしてもその中間的な領域が存在する。
「要医療・重介護」の人たちを受け入れてきた施設こそ介護療養型医療施設なのである。 こうした実態を単純なデータだけをもって一面的に割り切ることはできない。
霞が関のなかだけでは現場の実態をこと細かに十分把握するには限界があり、こうした調査であってもその結果に頼らざるをえない側面があるのも事実である。 しかし、医療区分のデータをすべての病床にそのまま当てはめることにはおのずから限界があることは認識しておく必要がある。
むしろ、それを単純に当てはめて政策誘導しょうとしても、うまくいかない場合のほうが多い。 たとえば、病院側とすれば、儲けの少ない老人保健施設などに転換するのではなく、医療保険適用の療養病床として生き残るために、あえて重症患者を集め、人工呼吸器などを大量に買いそろえるといった逆効果を誘発する可能性もある。
さらには、もし転換するとしても、いまのところは療養病床ほどきつくは締めつけられていない一般病床に転換するという動きだって起こりうる。 というよりも、こうした動きは現実に起きている。

わが国が計画経済でない以上、医療機関側がこうした対応に出ることはある意味で自然なことである。 いくら設計主義的に進めようとしても、現場において、こうしたひずみが生じうることを十分念頭に置きながら、具体的な政策を考えていく必要がある。
それゆえにこそ、現場の実態を踏まえつつ、関係者、さらには国民との間で一つひとつの合意形成をしっかりと積み重ねていくというていねいさが政策当局者には不可欠なのである。 「伸び率管理」をめぐる経済財政諮問会議との攻防国民とのコンセンサスが必要不可欠な問題であるにもかかわらず、拙速なかたちで療養病床再編の方針が打ち出されたのはなぜなのであろうか。
それは、経済財政諮問会議や財務省から社会保障費削減という大きな圧力がかけられていたためである。 その象徴的な議論がいわゆる社会保障費の「伸び率管理」である。
さらに、この「伸び率管理」の議論こそが、平均在院日数や療養病床削減数の目標値を設定しなければならなくなるきっかけをつくったともいえる。 そこで、ここでは、平成十七年の経済財政諮問会議で、「伸び率管理」をめぐってどのような議論が行われていたのかをふりかえりながら、その問題点を考えることにしたい。
平成十八年度医療制度改革に向けた政府内での議論の過程で、はじめてこの「伸び率管理」という考え方が登場したのは、平成十七年二月十五日に開催された経済財政諮問会議においてである。 この会議に、牛尾治朗、奥田頑、本間正明、吉川洋のいわゆる民間議員の連名によって、「経済規模に見合った社会保障に向けて」と題するペーパーが提出された。
このペーパーにおいて、「社会保障制度が、安心の基盤″としての役割を果たすために最も重要なことは、給付の手厚さではなく、制度の『持続性』である。 必要な社会保障サービスを効率的に給付しつつ、持続性をもつには、社会保障給付費の伸び率に目安を置いて、全体を管理することが不可欠である」とし、「給付の伸びを管理する指標として何を用いるかは検討が必要だが、経済規模に合った水準という意味で、我々は、『名目GDPの伸び率』が妥当と考える」と提案されたのである。

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